『女性健康の維持メカニズム』その2
3.男女の健康維持メカニズムの違い
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これまでお話ししたように、男性と女性は寿命が違いますし、
かかりやすい病気も違います。
どうして、そのようなことが起こるのでしょうか。
男性は喫煙や飲酒など、健康に好ましくない習慣を持っている方が
多いのかもしれませんが、それだけではなさそうです。
女性の余命の男性に対する優位性は年齢とともに高くなります。
それは、女性の生涯にわたって、女性に働く因子が作用しているためと
考えるとわかりやすいかもしれません。
その因子として、思春期から閉経期まで女性に作用する女性ホルモン、
エストロゲンが考えられています。
女性の健康は、エストロゲンに支配されています。
女性に多い病気の一つである骨粗しょう症は閉経後に増加することも
分かっています。
4.エストロゲンが働く場所
エストロゲンは女性ホルモンです。そういうと、子宮や卵巣、腟、
乳腺などの生殖器官にだけ働いているように考えてしまいそうです。
エストロゲンが働く、つまり作用するためには、そこにエストロゲンが
結合して組織の細胞に信号を伝えるための「受容体」がなくてはなりません。
逆にいうと、受容体があれば、エストロゲンは、そこで働くことが出来ます。
エストロゲン受容体にはαとβの2種類の主要受容体と、その他、エストロゲン
関連受容体と細胞膜結合型エストロゲン受容体があります。
表に示すように、エストロゲン受容体αは、主として生殖関連器官にあり、
エストロゲン受容体βは、主として生殖器官以外にあります。
その他の受容体を含むと、エストロゲン受容体は、生殖器官だけでなく、
全身のあらゆる臓器に存在しており、エストロゲンは体中のいたる所で
働いていることがわかります。
女性は、思春期から閉経期までの間、大量のエストロゲンが体中をめぐっており、
毎月ごとの周期的な変化と、年齢による変化を有し、それによって、
全身の臓器の機能が調節され、健康が維持されているのです。
つまり、女性の健康維持メカニズムは男性と大きく異なっており、
それを理解しないで、女性の健康を保つことはできないということになります。
次回に続きます。
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現在、医療法人財団順和会山王病院長、国際医療福祉大学産婦人科統括教授、日本産科婦人科学会監事(前理事長)、現場医師として、女性診療、人財育成の最前線に立ち、また厚生労働省の各政策会議、日本学術会議、公的運営会議、学会等の公務に務め、赤ちゃん、お母さん、女性の健康と笑顔に資するべく、業務に取り組んでいます。尚、2020年まで東京大学医学部産婦人科教授として長年、診療、研究、教育を務めて来ました。