『女性健康の維持メカニズム』その3
5.女性の健康とエストロゲン
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女性の体内エストロゲン(女性ホルモン)レベルは、思春期に上昇し、
性成熟期に高いレベルを維持します。
やがて、更年期になると低下し、閉経により、低いレベルになります。
エストロゲンは女性の健康を支配していますので、そのライフステージ
ごとのレベルの高低により、なりやすい病気が異なってきます。
思春期はエストロゲンの月ごとの周期が安定しないため、月経周期異常
を起こしやすく、性成熟期では、卵巣からのエストロゲン分泌の不調に
より月経痛や月経前症候群などの体の不調が起こったりします。
またエストロゲンが病気の発症や進行に影響する子宮筋腫や子宮内膜症
などが問題になります。
やがて卵巣機能が衰えてくるとエストロゲン分泌が乱れるようになり、
月経周期異常とともに、いわゆる更年期の自律神経失調症状やうつなどの
精神神経症状に悩まさるようになります。
更年期が終わり、老年期になるとエストロゲンレベルが低くなったこと
による尿失禁などの泌尿生殖器萎縮症状、高脂血症や動脈硬化、そして
骨粗鬆症による脊柱後弯(腰がまがる)などが増えていくのです。
6.女性健康と産婦人科
このように女性の健康は女性ホルモンであるエストロゲンに支配されて
います。
女性の健康を維持するためには、エストロゲンの状態を把握し、
もしそれが不調であるのなら、それを正常化することが大切です。
この医療に習熟しているのが産婦人科医です。
産婦人科というと、お産とか、生理とか、不妊症とか、子宮や卵巣の病気
を扱う診療科だと皆さんは思っていないでしょうか。
表に示す通り、確かに、従来の産婦人科学は、女性の生殖現象にかかわる
臓器を対象にした医学でした。
しかし、現代の産婦人科学は、そうではありません。
女性医療として、思春期から老年期までの女性のライフステージごとに、
全人的に女性の健康維持に貢献する学問になっています。
つまり、産婦人科は、女性の人生に寄り添う医療なのです。
「女性健康の維持メカニズム」は今回で終了です。
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現在、医療法人財団順和会山王病院長、国際医療福祉大学産婦人科統括教授、日本産科婦人科学会監事(前理事長)、現場医師として、女性診療、人財育成の最前線に立ち、また厚生労働省の各政策会議、日本学術会議、公的運営会議、学会等の公務に務め、赤ちゃん、お母さん、女性の健康と笑顔に資するべく、業務に取り組んでいます。尚、2020年まで東京大学医学部産婦人科教授として長年、診療、研究、教育を務めて来ました。